28日、高橋尚子の引退会見を生中継で見ていた。
夜のニュースでは報じられなかったが、1人妙な質問をした輩がいた。高橋が「完全燃焼した」と言うのに対し、「(出るといっていた)東京、大阪、名古屋の何れにも出ないで、惨敗した今年3月の名古屋を最後にして完全燃焼したと言えるのか。それほどの練習をしたというのなら練習内容を教えろ」といったような内容だった。
底意地が悪い質問ではあるが、高橋は「練習も本番のつもりで一所懸命走ってきた」的にまじめに答えていた。
しかし、この男、一流のアスリートのぎりぎりの判断が判るというのなら、思い上がりも甚だしい。
3年前にチームQを立ち上げたとき、高橋は「競技人生も残り2、3年だから最後は好きなようにやりたい」というようなことを言っていたと思う。その時点で競技者としてのピークは過ぎていたのだろう。本人がいうように、ファンの期待に応えなければという思いから引退の時期が遅れたというのは正直なところだと思う。
数年前ゴルフを例にして書いたように、青木のようにトッププロとしてのパフォーマンスができないと思った時点でステージを移すのか、尾崎将や杉原のようにボロボロになってもトップのカテゴリーでやり続けるのかは、本人の自由だ。それに対してどういう感情を持つかも受け手の自由には違いないが、それは他人に開陳する性質のものではない。まして、引退会見という公共の場でプロの決断を腐したこの男のやり方は私には到底受け入れられなかった。
「・・残念ながら、ゴールまでお伝えすることができません」。
そうコメントされ、名古屋国際女子マラソンの放映が終了した。
僕はそうした番組の終わり方を目の当たりにしながら、スポーツの残酷さを想った。
優勝した中村選手は、今回がマラソン初挑戦の21歳。
あの失速がどのような理由であるにせよ、高橋は勝負に負けたのだ。
若さに負けた、そう言ってもよいのかもしれない。
「マラソンてねえ・・、難しいんだよ」。
高橋の元上司・小出代表がしみじみと語っていた。
2時間44分かかって高橋はゴールした。
その頃、勝った中村選手は、携帯でも片手に友達にでも電話していたのではないか。
スポーツは、美しい・・。
某日本酒のCMで、<空白の1日>の小林と江川が共演している。
「ずっと謝りたかった」という江川。
「・・お互い辛かったよな」という小林。
特に恐縮しまくっている江川の表情が印象的である。
これを見て、ああ僕も歳をとってしまったのだと痛感した。
今の若い衆は<空白の1日>すら知らないだろう。
「這ってでも出て来い!」とメンチを切ったのは、中山竹通である。
往年の名マラソンランナーだ。
喧嘩を売った相手は、ライバル瀬古利彦。
この二人も、最近ではともに酒を酌み交わすこともあるのだという。
中山、瀬古と言っても、今の若い衆は知るまい。
知らなくていい。
江川、小林、中山、瀬古。
不器用ではあったが、その道にかける情念は十分感じられた。
いい時代であったのだ。
それを知られたら、僕らも困る。
ようやくにして<冬らしい>気候になってきた。
ランナーが注目される季節である。
大学駅伝、実業団駅伝、そしてマラソンだ。
来週の日曜日、東京国際女子マラソンが行われる。
注目はなんといっても高橋尚子だろう。
おまけにあのアレムも出場するというのだから、高橋にとってはこれ以上ないリベンジの舞台である。
マラソンが一つのドラマであるならば。
あの栄光からの5年間の日々が映し出されるはずである。
その5年間の間に、高橋の記録は塗り替えられ、野口という新しいヒロインも出現した。
そうした中で走り続けることの意味とは何なのだろうか。
その<走り様>を静かに見たいと思う。
原裕美子、23歳。
名古屋国際女子マラソンを、マラソン初挑戦で制して見せた。
ヘルシンキ世界陸上一発内定である。
本命・渋井陽子は7位。
この人は、本当に大舞台に縁がない。
直前に風邪を引いてしまったらしいが、体調管理もレースの内だろう。
2・19・46
高橋尚子の日本歴代2位の記録だ。
3年半前のベルリンでの記録である。
いつの間にか高橋は、数字だけが一人歩きする選手になってしまった。
走ってなんぼ。
ランナーとは過酷である。
原の優勝インタビュー中に、大南選手が精根尽き果てた感じで競技場に戻ってきた。
所属の某銀行陸上部は、今月いっぱいで廃止が決まっている。
そのコントラスト。
かくも美しい残酷物語。
壮絶なる女の戦いであった。
アテネ五輪マラソン日本代表が決定した。
選考レースが指定されている以上、そこで優勝した坂本、土佐が選ばれたことは妥当な結果であろう。
むしろ、シドニー金メダル、国民栄誉賞と、時代の申し子にまで祭り上げられた感のある高橋にとっては、良いターニングポイントとなるのではないか。
補欠にまで落選したことに、評議員の一員である増田明美さんがこう言っていた。
「いやしくもオリンピックで金メダルを取った人。補欠に選ばれて、別の立場でアテネへ行くというのはどうなんでしょう。」
注目されることのプレッシャーを身に染みて知っている人らしい配慮だったと思う。
今回の選考についての中山竹通氏の言葉は以下のとおりである。
「果報は寝て待てではダメ。宝くじを買わないで当てようなんてダメ。予選を通り越して決勝を考えるなんてナンセンス。高橋は名古屋を走るべきだった。どうして小出監督は逃げたのか。高橋は北京はもうだめだろう。トラックでは勝負できないし、このまま消えていくものと思う。」
相変わらず辛らつである。
最後に、福岡、びわこと一か八かの勝負に出た旭化成・小島選手の健闘を大いにたたえたいと思う。
3月14日の名古屋国際女子マラソンで男女ともアテネ五輪の代表選考レースが終了した。今日(15日)の陸連理事会で代表が選考(内定)されることになる。
念のため選考基準を確認すると、
1) 男女マラソン
(1) 第9回世界陸上競技選手権大会でメダルを獲得した男女マラソン競技者の中でそれぞれの日本人最上位者を代表選手とする。
(2) 上記以外の男女マラソン代表選手は、各選考競技会の日本人上位の競技者の中から本大会でメダル獲得または入賞が期待される競技者を選考する。
理事会でマラソン男女代表が発表された。女子は私の選んだリストと同じになったが、男子はよくわからない結果となった。レースの格で油谷が選ばれたのだろうが、正直言って夏に行われる世界選手権は超一流は欠ける構成だ。同じ夏に行われるレースでもオリンピックには選手は集まるのだから、そこは選手にとっての重みは違うのだろう。「格」で選んだ油谷に対し、残りの2枠はタイムだけで選んだ感じだ。このダブルスタンダードが見るものに納得し難い印象を与えているのだ。
福岡では上位入賞ならなかった小島は相手関係だとかまだ一応の理由はつく(それにしても不合理ではあるがが、)一番難しいコースの東京でレースを作った大崎が福岡3位の高岡よりも評価が低いとは言葉もない。せめて選ばれた選手がオリンピックで好成績を収めるのを祈るのみだが、それでも理不尽な選考で選ばれなかった選手の無念は消えるものではない。
男子に続き、今週の名古屋国際女子マラソンで、アテネ五輪女子マラソンの選考レースもすべて終了することとなる。
その開催前に、高橋直子が雲隠れ、管理選手が急遽出走を取り消したことから、小出監督も姿を消した。
「俺が名古屋に乗り込むと一騒動になるから。」との理由からだ。
内心では、<代表当確>の手応えをしっかりと掴んでいるに違いない。
名古屋の結果が平凡なものに終われば、野口、坂本に次ぎ、3番目の代表の座を高橋が掴むのであろう。
かくも高橋の影響力が強いということは、五輪で金メダルをとることの大変さを物語っているとも言えるのかもしれない。
名古屋に出場する選手達は、記録、風、そしてこの高橋のオーラとも戦わなくてはならない。
「マラソンは経験がものを言うのです。」
増田明美さんが以前きっぱりとそう言っていた。
飛び跳ねるようなダイナミックなフォームでグイグイと押しまくる野口みずきのように、日本の女子マラソンも確実に新時代に突入した感がある。
高橋どうこうではなく、そうした新ヒロインの出現を僕は静かに期待することとする。
びわこ毎日マラソンが終わり、アテネ五輪男子マラソン代表選考会はすべて終了した。
3つの選考会で唯一優勝を果たした国近は当確であろうが、残り2つはほぼ横一線。
対象となっている選手にとっては、長い一週間となりそうだ。
現役時代から歯に衣着せぬ言動で我が道を行っていた中山竹通氏が、びわこの結果を受けてこんなことを言っていた。
「雪が降ったり、気温が極端に低い中で選考会を行って一体何の意味があるのか。アテネ五輪は真夏なのだ。今の選手ではおそらく30km過ぎで脱落するだろう。真冬にトライアルをやるなら、一発勝負か、タイムの単純比較で選ぶしかない。陸連がどんな理由を付けて選手を選ぶのか見ものである。」
陸連が、こうした意見を、成る程と考えるか、好きに言ってろと考えるのか・・。
どの世界でもそうであろうが、現場の声がお偉方には届かない(聞こうとしない?)気がする。
そろそろ変わらなきゃなあ。
昨日行われた東京国際マラソンでNTT西日本大阪の大崎悟史が日本人トップの2位に入賞した。優勝できなかったし、2時間8分46秒のタイムは、先に行われた福岡国際マラソンの上位が2時間7分台だったのに比べれば見劣りするが、五輪代表選考では、難コースの東京であることや、30キロ過ぎからレースを引っ張った内容から、福岡の2位、3位よりも優位にたったといえるだろう。
テレビの実況によれば、大崎はフルタイムの労働者だということだ。朝は普通に会社に行き、夕方5時か6時から練習するのだろう。現在の景気情勢から会社も運動だけの社員を雇っておく余裕がないところが増えてきているのかもしれない。
陸上の名門であるヱスビー食品や旭化成、カネボウといったところに比べて、大崎のおかれた環境はお世辞にも恵まれているとは言い難い。だが、どんな環境でもしっかりとした方法とやる気があれば、成功できるということだ。
自らを顧みて、うまくいかないのを環境のせいにすることがなかっただろうかと、情けない気分になった。